【MP4/5B 制作記 番外編】デカールへの蛍光塗料の染み出し対策を考える
こんにちは!
黒髪ロングは大正義という偏向思想の持ち主、シノです。
現在MP4/5Bを製作中ですが、蛍光塗料上のデカールコートでかなりの苦労をしました。。。
今回は私の練習成果などを紹介しながら、デカールへの蛍光塗料の影響について考えていきます。
失敗例から、成功のためのクリアコートのコツなどを解説してあるから、ちょっと長い記事だけどぜひ最後まで読んでみてね!
目次
蛍光塗料の染み出しってなに?
蛍光色の上にデカールを貼ってクリアコートをすると、蛍光染料が染み出す危険がある
デカールでよくある失敗例として、蛍光染料の染み出しというものがあります。
これは、蛍光色で塗装をした上に白などのデカールを貼って、その上からラッカーなどのシンナー成分の強いクリアーコートをすると、蛍光染料が溶け出してデカールを染めてしまうというものです。
今回作例で紹介するMP4/5Bは、翼端板にフィニッシャーズのMP4レッドという塗料を使っています。
この塗料は最終コートで蛍光ピンクを使用しているため、そのまま安易にクリアーコートをしてしまうと。カーナンバーなどの白いデカールに染料が染み出してきてしまいます。
今回は失敗例も含めて、この蛍光塗料上のデカールコートについて考えていきます。
クリアコート試験のための下準備
今回は2種のデカールで染み出し試験をしてみます
今回は、製作しているMP4/5Bのキットに付属していたタミヤ製の純正デカールと、ミュージアムコレクションのハクリデカールの2種を使って、蛍光染料の染み出しを試験していきます。
MP4/5Bの製作本番では、セナのカーナンバー[27]を使用するので、試験ではベルガー用の28番を使っていきます。
下地はプラ板に実際と同じ塗装をしたものを使用
MP4/5Bで蛍光色上にデカールを貼らなければならない箇所はリヤウィングの翼端板のみなので、同じように平面のプラ板にMP4レッドを塗装後、蛍光ピンクを3回重ね塗りした状態の塗装面を準備します。
デカールにより違う白インクの隠蔽力
こちらは塗装面にデカールを貼付けた直後の写真です。
比較していただければ分かる通り、タミヤのデカールは白部分が透けて、クリアーコート前から下地が影響しています。
かわってミュージアムコレクションのハクリデカールは素晴らしい隠蔽力で、下地のレッドを完全に隠して真っ白に発色しています。
ちなみにハクリデカールの方は乾燥後に余白のフィルムを剥がして使う構造になっているので、クリアコート前にしっかり剥がしておきます。
ミュージアムコレクションのハクリデカールについては、MP4/5B制作記の一つ前の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ一緒に読んでみてね!
【MP4/5B 制作記 Part.4】ミュージアムコレクションのハクリデカールの貼り付け(タミヤ・1/20・マクラーレンホンダ)
[試験-1回目]ラッカークリアーを慎重にコートしてみる
今回コートに使用するのはフィニッシャーズのオートクリアー
デカールが貼れたので、いよいよラッカークリアーを乗せていきます。
今回はラッカークリアーの中でも乾燥が早い、フィニッシャーズのオートクリアーを使います。
希釈率は説明書に記載されていたオートクリアー[1]に対し、ピュアシンナー[3]の割合にします。
ハンドピースは0.3mmを使い、圧力は0.07MPaの設定。
この状態でニードルをかなり絞り気味に解放し、塗装面に乗ったクリアーが速効で乾燥するくらいの加減で、地道にクリアーを吹きます。
[軽く砂吹き]→[5分ほど乾燥]を20回ほど繰り返して少しずつクリアー層を重ねていきました。
この時点でタミヤの水転写デカールは、ほんの少し染み出しを感じましたが、ハクリデカールの方はほとんど染み出しを感じず、順調に塗り重ね作業は進みました。
通常のクリアコートなら3〜5回くらい砂吹きすれば、本吹きでクリアーをどっぷり乗せても大丈夫なので、20回も砂吹きすればもう大丈夫だろうと思い、ここで試しに本吹きをしてみました。
すると、、、
見事蛍光ピンクのカーナンバーが出来上がりました。。。
砂吹きが順調だったから、完全に油断してたわね。。。
でも本番じゃなくてホントよかったよ。。。
やっぱ未経験でわからないことは、しっかり事前に実験しておいた方が安全だね!
[試験-2回目]より慎重にクリアコートしてみる
やはりそうそう甘くはなかった蛍光色の上からのトップコート。
次はより蛍光染料の染み出しが少なくなるように、もっと慎重に実験をしてみたいと思います。
デカールを貼る前に、クリアーでコートしてみる
前回は蛍光ピンクの上から直接デカールを貼付けていましたが、今回はより染み出しを少なくするために、デカールと蛍光ピンクの間にクリアー層を一度挟むことにしました。
クリアー層に染料がなるべく染み出さないように、しっとりさせないように気をつけながらクリアーを乗せて、しっかりと1晩乾燥させてからデカールを貼付けます。
乾燥したらオートクリアーを慎重に乗せていく
デカールが完全に乾燥したら下地のクリアーや蛍光染料が溶け出さないよう、慎重にオートクリアーを乗せていきます。
オートクリアーは前回同様にクリアー[1]シンナー[3]の割合のままですが、今回は絶対に厚吹きはせずに、表面が常に乾燥しているくらいの状態で、慎重に慎重にクリアーを重ね吹きしていきます。
最終的には光沢を出したいので、最後に厚吹きをしたくなるところですが、そこはぐっとこらえて最後に磨ぎだしによって光沢を出すことにします。
間の乾燥時間を短くしすぎて失敗
途中までは上手くいっていたんですが、だんだんと乾燥を待つのがめんどくさくなって、各砂吹き間のインターバルを少し短くしてみたら、やはり染料が滲み出てきてしまいました。
ただ、1回目よりは滲みはかなり少ないので、少しは成果があった感じです。
見比べていただくとわかりますが、下のタミヤ製水転写デカールに比べると、やはりハクリデカールはかなり耐性があるようです。
結局また失敗したのね。。。
模型製作はやっぱり焦ってやるといいことないわね。
最初は各塗装の間に5分くらいは乾燥時間を取ってたんだけど、だんだん気が緩んで2分間隔くらいにしたら、流石に短かったみたいで結局染み出してきちゃいました。。。
ここまでの結果から、下記のような感じで作業計画を立てました。
- デカール貼り付け前はクリアーでコートする
- デカール貼り付け前のクリアーコートは、完璧ではないですが確実に染料の染み出しを抑える効果を感じられたので、デカール前には必ずコートした方が良いです。
貼付け前のコート作業でも、なるべく染み出しが少なくなるよう、砂吹きを重ねて慎重にコートするようにします。 - デカールはコートしたクリアーが完全に乾燥してから貼る
- デカールは、先にコートしたクリアーが完全に乾燥してから貼るようにします。実験時は時間短縮のためクリアコートの乾燥を一晩しかしなかったので、下地のクリアー層が完全に乾燥できていなかった可能性があるためです。
- 上吹きのクリアコートは砂吹きで、これでもかというくらい慎重に進める
- クリアーコートは、少しでも油断して塗装面をしっとりさせてしまうと、すぐに蛍光染料が滲み出てきてしまいます。
コート時には、塗装面がつや消し状態になってでも、表面が常に乾燥しているくらいの感覚でクリアーをコートするようにします。 - 各砂吹きの間の乾燥時間は長めに取る
- 実験の際は砂吹き間の乾燥を2〜3分ほどしか取らずに重ね塗りを進めてしまいましたが、これだと先に塗ったクリアーが半乾きの状態で上塗りすることになってしまったので、インターバルは5〜10分くらいは置いた方が安全だと思います。
じゃあ、こんな感じの手順で本番に入って行きたいと思います。
えっ!? まだ1回も成功してないのに、もう本番に入っちゃうの?
いや、僕もう疲れちゃったよ。。。
だってこの実験、乾燥待ちとかあるから最初の作業からもう1週間も経ってるんだよ。
貴重な模型製作の時間を、もう1週間もこれに費やしてるんだ。
もうやだ。やめたい。
そりゃ諦めてウレタンとか使えば簡単に解決するだろうけどさ。
でもさ、k
はいはい。わかったから本番に移りましょ!
翼端板のクリアコート本番
ここからが実際の塗装作業本番になります!
ここからはクリアコートを成功させるための解説を交えながら作業手順を紹介していきます!
[手順1]デカール貼り前のクリアーコート
デカール貼り付け前に塗装面をオートクリアーでコートしていきます。
しっとり吹いてしまうと、結局クリアー層に蛍光染料が染み出してきてしまいます。
それだとコートする意味が無いので、常に砂吹きの状態でクリアー層を重ねていきます。
今回は[クリアー砂吹き]→[5分乾燥]を30回ほど繰り返しました。
砂吹きでの塗装のため、表面の仕上りはザラザラに仕上がります。
このままだとデカールの密着性が低下してしまうので、軽くコンパウンドがけをして表面を馴らします。
今回はハクリデカールなので、シルバリングが起きることはありませんが、通常の余白があるデカールだとシルバリングが起きる可能性がありますので、注意しましょう。
それからコンパウンドをかけすぎると、せっかくコートしたクリアー層が無くなってしまうので、ほどほどにしておきましょう。
[手順2]デカールの貼付け
デカールはクリアーコートが済んでから3日は乾燥させてから貼付けます。
正直3日も乾燥させる必要も無い気がしますが、とにかく気を抜かずに安全策を取るようにします。
もし密着性が心配なら、マークセッターを使うのも手ですが、マークセッターはほんの少しですがラッカー塗装面に影響があるので、できれば使わない方が無難です。
[手順3]ラッカークリアーの吹き付け
いよいよラッカークリアーの吹き付け本番に入っていきます。
練習では[オートクリアー:1]対[ピュアシンナー:3]の比率で塗料を希釈していましたが、より乾燥を早めるために[オートクリアー:1]対[ピュアシンナー:4]の比率にしました。
溶剤を多くすると溶剤の影響が大きくなる気がしますが、代わりに乾燥が早くなります。
今回のケースではとにかく塗装面が常に乾いた状態を維持することが大切なので、より乾燥が早くなる方を優先しました。
溶剤成分が強くても、それが影響を及ぼす前に乾燥させてしまえばいい訳です。
塗装を始めたばかりが一番影響が大きいため、最初は[クリアー砂吹き]→[10分乾燥]を10回ほど繰り返します。
クリアーでデカールが軽くコートされたら、[クリアー砂吹き]→[5分乾燥]を10回ほど繰り返します。
10回コートを繰り返したらその後1時間ほどしっかりと乾燥させます。
10回のコートで出来たクリアー層の溶剤分を、この1時間で完全に抜き取ります。
以後は[(クリアー砂吹き+5分乾燥)×10回]→[1時間乾燥]という手順を10回ほど繰り返します。
つまりクリアー吹きと乾燥を約100回繰り返すことになります。
クリアーコート100回とか、ホント気が遠くなるわね。。。
でも練習のときの結果を鑑みると、これくらい慎重にやらないと失敗する可能性があるからね。
ここで失敗すると、新しいデカールを買わなきゃいけないし、塗装も剥離してやり直さなきゃいけなくなるから、慎重すぎるくらいに作業を進めた方がいいと思います。
ちなみに、作業は別に1日でやる必要はありません。
おいらは土日の二日でそれぞれ50コートずつ作業して仕上げました。
5分の乾燥時は微妙に暇なので、1日中[クリアー吹き]→[PCの音ゲー1曲]をひたすら繰り返してました。
塗装時のごみ取りは1500番のペーパーで
かなりの回数を塗装するので、塗装中にはかなりの数のゴミが付着します。
目に見えるような目立つゴミは、クリアー層の中に埋まってしまうと取り除くのが困難になってしまうので、見つけ次第1500番のペーパーで除去します。(当然しっかりと乾燥させてから)
ただし、ゴミが入る度にペーパーをかけていたら、何時までたってもクリアー層を稼げないので、細かなゴミは100回のコート中2回ほど軽くペーパーをかけて除去するくらいにしておきましょう。
クリアーコートには乾燥の早いシンナーを使う
今回は模型用ラッカー塗料の中でも、比較的乾燥が早いフィニッシャーズのクリアーをつかっています。
もしMrカラーやガイアカラーなどのラッカークリアーを使う場合は、それぞれのメーカーから販売されている薄め液の中でも、乾燥の早いものを使うようにしましょう。
Mrカラーには、UVカット効果のあるスーパークリアー3という高耐久のクリアー塗料があります。
これらを使う場合には、乾燥の早い「ラピッドうすめ液」を使用しましょう。
ガイアカラーのEXクリアーを使う場合には、「メタリックマスター」という薄め液がおすすめです。
この薄め液はメタリックカラー用に作られた薄め液ですが、種類の多いガイア系薄め液の中でも乾燥がとても早いので、今回のような作業にはおすすめです。
[作業4]磨ぎ出し
今回は砂吹きでクリアー層を稼いだので、当然仕上りはつや消しのザラザラになります。
表面に簡単にツヤを出すには、少し濃いめのクリアーをドップリ吹くのが早いですが、今回はそれが出来ないので磨ぎ出しによりツヤを出していきます。
最初は1500番のペーパーでカラ磨ぎ
表面はかなり荒い状態になっているので、まずは1500番のペーパーで表面を馴らしていきます。
(磨ぎだしに慣れている方は1200番くらいでもOK)
今回はついでにデカールの段差も消していきますので、デカールの堺にペーパーがかからない箇所が無くなるまで、1500番でカラ磨ぎしていきます。
今回は、もうすぐデカールの段差が消えそうな所まで研いだら、感触的にクリアー層が足りなくなりそうだったので、再度30回ほどクリアーコートをし直しました。
クリアーコートが薄くなってデカールを削ってしまうと、ここまでの苦労が水の泡です。
磨ぎ出し中の感触で危ないかな?と感じた場合は、めんどうですが必ずクリアー吹きをするようにしましょう。
次は2000番のペーパーで水磨ぎ
1500番のペーパーでデカールの段差が消せたら、次は2000番のペーパーで水磨ぎしていきます。
(水磨ぎとは、耐水ペーパーに水を浸けながらペーパーがけをする作業です)
今回は薄いクリアーを使ったのでクリアー層の厚さもかなりギリギリしかありません。
磨ぎ出し作業で過剰にクリアーを削りすぎないように注意しましょう。
コンパウンドをかけて仕上げ
コンパウンドはタミヤ製の3種を使用
コンパウンドがけにはタミヤコンパウンドの[粗目][細目][仕上げ目]の3種を使用していきます。
量もそこそこあり、なによりどの模型店にも置いてあって入手性が抜群です。
コンパウンドがけ[粗目]
コンパウンドは[粗目]→[細目]→[仕上げ目]の順でかけていきます。
コンパウンドは原液のままだと粘度が高すぎて作業がしにくいので、少量水を混ぜると滑りがよくなって作業がしやすくなります。
最初の粗目では、2000番で付いたペーパーキズをしっかりと消すように作業します。
ここでしっかりとキズを消し切らないと、仕上げ目までかけてもキズが残ってしまいます。
ただし、[粗目]のコンパウンドは以外と研磨力が高く、調子に乗ってかけすぎるとデカールや下地が出てきてしまう可能性があるので、ほどほどにしておきましょう。
コンパウンドが付いたままだと、どれくらい研磨できているか確認ができないので、時々水で洗い流して研磨具合を確認するようにします。
私は机に100均で買った風呂桶を置いて、水を付けながら作業をしています。
コンパウンドがけ[細目]
[粗目]のコンパウンドで2000番のキズがしっかりと消せたら、[細目]の研磨に入っていきます。
[粗目]ではまだ表面がつや消しっぽい状態のままですが、[細目]をかけると一気に光沢感が出ます。
[細目]は[粗目]に比べるとかなり研磨力が弱いので、ここは根気よく丁寧にコンパウンドがけをしましょう。
研磨力が弱いので、念入りにコンパウンドがけをしてもデカールや下地が出てきてしまうことは無いので、理想のツヤが出るまでしっかりとかけるようにしましょう。
もしいくら研磨しても消えないキズがある場合は、前段階の[粗目]でペーパーキズが消し切れていないので、[粗目]のコンパウンドからかけ直すようにしましょう。
コンパウンドがけ[仕上げ目]
[細目]のコンパウンドでツヤがしっかり出せたら、最後に[仕上げ目]のコンパウンドで仕上げの研磨をします。
[細目]だけでもかなりのツヤが出せますが、最後にこの[仕上げ目]をかけると光沢感がグッと上がって、本当にテカテカになります。
[細目]でしっかりとツヤが出せていれば、[仕上げ目]は軽くかけるだけで仕上がります。
ここは仕上げですので、かけるときは力を入れず、クロスと指の重さをかけるだけで丁寧に研磨するようにしましょう。
仕上げ目の研磨が終わったら、流水でパーツに付いたコンパウンドをしっかり洗い流します。
水から上げたパーツは、自然乾燥だと水滴跡が残ってしまうことがあるので、水分は軟らかいクロスなどでしっかり拭き取っておきましょう。
蛍光塗料が染み出すことなくクリアコート完成!
2回の練習失敗のおかげで、本番ではなんとか蛍光塗料を一切染み出させることなく、翼端板を仕上げることができました!
本来ならここは溶剤の影響が少ないウレタンクリアーを使うのがセオリーだと思います。
しかしながら、ラッカークリアーでも、「やってやれないことはない」ということを証明することができました。
大口径のハインドピースを持っていなかったり、コンプレッサーの圧が低かったりでウレタンが吹けないという方でも、慎重に作業を進めればラッカークリアーで対応できます。
練習時は蛍光塗料が染み出してばっかで、ホントどうなるかと思ってたけど、練習したおかげで本番では奇麗に仕上げることができたわね!
やっぱりわからないことは、まず練習で試してみるのが、模型製作では大事だということを再認識しました。
今回の練習の結果が、これからクリアーを吹く方の参考なればうれしいです!